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2021.03/13 更新 メディア

FOOD ARTISANS OF JAPANに掲載

日本の食・職人

FOOD ARTISANS OF JAPAN -Recipes and stories

3代目鍛冶屋である干場勝治さんが700°C~800°C(1290~1470°F)に熱せられた火に突き出すと金属の火花が飛び散る。その後金床に置き、合計で15回程叩く。他の金物職人はコークスを燃料としていることが多いが、ここの火は能登の木炭を燃料としている。このことは、木炭は能登半島の主要な産物であり、日常生活と同様に地元の職人さんたちに身近なものであり、そこには長い歴史があります。日本海に向かって北に伸びる能登半島は、伝統的な建築材料とこの地で何世紀にも渡って培われてきた方法を上手に組み合わせてきた日本で数少ない場所の一つです。私は2011年に初めて能登を訪れ、半島全体に広がる沿岸道路を走っていたとき、私は田舎の本物の感触と面白みのないプレハブみたいな建物がほとんどないことに驚かされました。これは、まだ整理しきれていませんが、能登の地には建築用の珪藻土や木材、木炭用の木などの原材料が豊富にあるからだと考えています。国連でも、世界的に重要な農業遺産システム(GIAHS)として、能登の一部を指定しているので、この考えは、それほど的を得ていない事はないと考えています。(農林水産業と人間の生活)その産業の一つが鍛治です。鍛冶屋は10種類の林業・漁業・料理の刃をマスターしなくてならず、勝治さんはそれらを習得するまでに15年間見習いとして修行を積みました。

現在、能登・石川を合わせても残っている伝統的な鍛冶場はふくべ鍛治のみとなっています。ふくべ鍛治は今、4代目干場健太朗さんとそれを支える熟練した妻の由佳さんが率いています。由佳さんは初対面からその後のお話でも常に自信に満ちていたため、私は最初、彼女はこの家の娘だと間違えたほどでした。

健太郎さんは若い頃は、能登町役場で勤める傍ら、時間を割いて家業の鍛冶屋で修行をしていました。今では父の跡を継ぎ、事業の責任者を務めています。健太郎さんは父のように鍛治職人になるように腕を磨く一方で、他の事業にも目を向けました。それが、能登半島のあちこちをバンで走る移動式の鍛冶屋を始めることでした。近年、道具の世話を自分でできる人が少なくなっているため、移動式の鍛冶屋では、包丁・鎌・鍬・斧などの修繕も行っています。この修理に勝治さんの時間の多くを費やしているため、勝治さんは月に数本の包丁しか作れません。取材時に写真が撮れたことはこのことから幸運であるといえます。

数年前、「湯宿さか本」で机を取り囲み午前中のコーヒー休憩を楽しんでいたときに、坂本しんちゃんと話していた時、しんちゃんに彼の愛するマキリという包丁について教えてもらいました。その話の終盤で彼は興奮して、妻のミホコに実物を持ってくるように頼みました。どうやら彼はもっと特別なマキリを持っていたらしいのですが、とても可愛い女の子にあげてしまったらしく普通のしか持っていないらしいのです。このエピソードを悲しげに話す彼を見て、私たちは笑っていました。

マキリは太くて平らな両刃のナイフで先端が曲がっています。絡み合った網を切ったり、魚を捌くことができたりと、万能であるため、この辺りの漁師の必需品となっています。このようなことは実際にはやることはないとは思いますが、その話を聞いて私も欲しくなってしまいました。ミホコに店に電話をかけてもらい「湯宿さか本」で遅めの昼食を済ませ、私たちはふくべ鍛治に車で30分かけて向かいました。

私たちの普段使う包丁と農機具は隣県の安中の小さな田舎町の鍛冶屋のマツナガヒトシとその父によるものなので、特に追加で必要なことはなかったのですが、ふくべ鍛治の漁師の包丁には特別な魅力があり、とても欲しくなりました。そこでマキリと上手に使えそうなイカ割き包丁を購入しました。この包丁でイカを掃除しながら切ることにより刺身にする時の恐怖を克服しました。私は今、この包丁でイカを捌いて、イカのワタ刺しを作ってお酒のアテとして楽しんでいます。

私は、時々ふくべ鍛治に行きますが、訪問するたびに包丁が陳列されているのを見つめて、購買欲と戦いますが、負けてしまいます。最近、夫と友人へのプレゼントに猪の皮を挽く包丁を選びました。しばしば私の目を引くのは意外性のあるものです。私はいつか、とても持ちやすい剃刀のように鋭い刃を持った鍬を埼玉に持ち帰りたいと思っているのですが、飛行機には乗せられないかもしれません。

多くの人々が日本に来ます。そして、日本のクールな包丁を買うことは確かに多くの人の目的の一番上となっています。しかし、日本国外のレストランの厨房で目にするかなりの数の包丁は不必要に華やかであったり、刃に渦巻き模様が刻まれていたりします。悲しいことに多くのいわゆる職人と呼ばれる料理人は日本の包丁の多くがプレス鋼で作られていることをほとんど知りません。これらの一般的なプレスされた包丁に対して鍛治職人勝治の意見「弱い」ということです。