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2020.06/27 更新 金属

鍛冶屋の使う金属 ~鉄と鋼編~

刃物の材料にはさまざまな金属が用いられますが、今回はその中でも代表的な素材である「鉄」と「鋼(はがね)」についてご紹介したいと思います。

日本ならではの刃物の特徴のひとつとして、鉄と鋼を合わせてつくる、という製法が挙げられます。その際、刃物の基礎となる部分には鉄を使用し、刃の部分には鋼を用いるのですが、この製法にはどのようなメリットがあるのでしょうか。

まずは鉄と鋼の違いについて。私たちが普段「鉄」だと認識している金属は、理科の授業で習った元素としての鉄(Fe)とイコールではありません。実は、「鉄」も「鋼」も、鉄(Fe)と炭素(C)の合金の一種なのです。炭素は、炭や鉛筆の芯から硬いことでよく知られるダイヤモンドにも含まれており、さまざまな形態を持つ元素として知られています。

「鉄」は、鉄(Fe)に含まれている炭素の比率が0.02%未満のものを指し、正しくは「純鉄(じゅんてつ)」といいます。英語では「アイアン(iron)」です。そして、「鋼」は含まれる炭素が0.02~2.1%のものを指します。英語では「スチール(steel)」といいます。また鋼には炭素のほかに、ケイ素(Si)、マンガン(Mn)、リン(P)、硫黄(S)などの元素も微量ながら含まれています。そのため、ひとくちに鋼といっても炭素や他の元素の含有量によってさまざまな種類のものがあります。

また、含まれる炭素の割合が2.1%を超えるものについては「鋳鉄(ちゅうてつ)」と呼ばれます。

鉄よりも硬い鋼ですが、鍛造や熱処理をおこなうことでさらに硬度を増します。特に、加熱後に急冷する熱処理の工程は「焼き入れ」といい、刃物づくりの中でもっとも重要な作業のひとつです。

しかしながら、硬ければ硬いほど良い刃物なのか?と問われると一概にそうではないのが、とても面白く、また奥深いところ。硬度に比例して切れ味は高まりますが、その反面、硬すぎると刃が折れたり欠けたりしやすく、またその硬さのために研ぎづらくなります。かといって硬度を下げて柔らかくすると、欠けにくくはなりますが切れ味は落ちてしまいます。

日本の刃物は、全体を柔らかい鉄でつくり、刃の部分のみを鋼にしたことで、切れ味と柔軟性の両立を実現しました。鋼と比較して柔軟性の面で優れている鉄がクッションの役割を果たし、刃にかかる衝撃を吸収するため、硬度の高い刃でも欠けにくくなります。またメンテナンスの際にも、砥石に当たる硬い鋼の部分が少なくなるため刃がつきやすいのです。

金属の特徴がわかると、刃物の見え方が変わってくるかもしれませんね。