包丁は日々使用していくうちに、刃先が摩耗してどんどん切れ味が落ちていきます。使用頻度にもよりますが、2,3か月から最低でも半年に一度くらいが研ぎ直しの目安となります。
「包丁研ぎは難しいし大変そう…」というイメージをお持ちの方も多いかもしれませんが、基本的な研ぎ方を理解して、繰り返し経験すればどなたでも上達しますので、ぜひチャレンジしてみてください。
まずは包丁の各部位の名称をご確認ください。研ぎ方の説明を読んでいて聞き慣れない部位や名称が出てきたら、このイラストで確認してみてください。
・包丁を研ぐ前に…
【刃のタイプを確認する】
包丁の刃には、両刃(りょうば)と 片刃(かたば)があります。図のように、先が左右対称になっているものを両刃、片方に傾斜がついているものを片刃といいます。一般的には、三徳包丁や牛刀は両刃、出刃包丁や刺身包丁は片刃のものが主流です(左利き用の包丁の場合も基本は同じです)。
【砥石を準備する】
包丁を研ぐ前に、砥石をよく水に浸しておきます。乾いた砥石を水に浸けると、小さな気泡が上がってきます。この泡が出なくなったら、砥石が十分に水を含んだサインです。砥石に水を含ませることによって、研ぐときの摩擦熱を軽減し、滑りも良くなります。また、研ぐ際に生じる研ぎ汁を砥石の表面に残しながら研ぐことによって、研ぎ汁が研磨剤の役目を果たし、切れ味が鋭く綺麗な仕上がりになります。研ぎ汁で「研ぐ」という感覚を身に付けましょう。
・包丁を研ぐ
【刃を砥石に当てる角度】
包丁を研ぐときにもっとも重要なのは、刃を砥石に当てる角度です。
片刃の場合は、刃の表面の傾斜している部分を砥石に当てて刃先全体を研ぐことを心掛けましょう。平らな裏面を研ぐ際は、包丁を砥石にべったり全面をつけ、平に手を添えて研ぎます。
両刃の場合は、刃先の部分のみを砥石に接触させるような感覚で、約15度の傾斜をつけます。これは、ちょうど10円玉2~3枚が隙間に入るくらいの角度です。包丁の持ち手がブレて角度が変わってしまうと刃がキレイにつきませんので、包丁をしっかりと利き手で握り、角度を固定するよう心掛けてください。約15度の角度をできるだけ一定に保ったまま、砥石の上を前後にスライドさせます。
※この角度は両刃でも片刃でも同じですが、片刃の場合には、フラットな裏面ではなく角度のついている面(表面)を砥石に当ててください。平らな裏面を研ぐ際は、包丁を砥石にべったりとつけ、平に手を添えて研ぎます。
包丁を研ぐ際は、利き手で柄を持ち、反対の手で包丁の平を押さえ、表面のはらから研ぎます。刃渡り15cmほどの包丁であれば包丁の刃をだいたい三分割し、切っ先から真ん中、手元の方向へと徐々にスライドさせながら研いでいきます。
包丁は砥石に対して45~60度くらいの角度で当てます。表面を研ぐときは手前から奥へ力を入れて押し出すように動かし、戻す時は無理に力を入れず、軽く引きます。反対に裏面を研ぐときは軽く押し出し、引き戻すときに力を入れます。砥石の凹凸に対して包丁の刃先が逃げるように力を入れながら研ぎます。適切な角度で包丁が砥石に当たっていれば刃先数ミリの部分に砥石の跡が付きますので、砥石の当たり具合を確認しながら角度を調節してください。
刃を研いでいると砥石が少しずつ削れ、砥石の細かな粒子が水に混じります。研ぎ汁は見た目がなんとなく汚いために水で流してしまいがちですが、この研ぎ汁を利用しながら研ぐことにより、仕上がりが美しく鋭利になります。
刃の先端に「カエリ(バリ)」が出てきたら、きちんと研げているサインです。包丁の切っ先から刃元の方まで均等にカエリが出たら、反対側の面を研ぎます。カエリが出ているかは、研いだ刃先の裏側の面を指で軽くなぞることによって確認することができます。
この工程を数回繰り返し、両面とも均等に研いでカエリを取れば終了です。どうしてもカエリが取れない場合は、包丁と砥石に対する角度を60~80度くらいにし、縦方向に研ぐようにすると取れやすくなります。
・研いだ包丁の切れ味を確認するには
研いだ刃を顕微鏡で拡大してみると、刃先はまるでノコギリのように鋸歯状になっていることが確認できます。研いだのにギザギザ?と思われるかもしれませんが、このギザギザが切れ味の秘訣。細かく鋸歯状になった刃が食材に食いつき、鮮やかに切れるのです。
この切れ味を確認するために、職人は自分の爪に刃を当てます。すこし刃を引いてみて爪にひっかかる感覚があれば、しっかりと研げている証拠。研げていないときは、爪の上を刃が滑ってしまいます。もちろん爪とはいえ体の一部を傷つける行為ではあるため、誰にでもオススメできる方法ではないかもしれません。爪に刃を当てるのはちょっと…という方は、新聞紙を切ってみるなど他の確認方法もありますので、どうぞご安心ください。
切れ味が確認できたら、研ぎは終了です。包丁を中性洗剤などできれいに洗い、食材を切ってみましょう。包丁の切れ味が良いと、料理をつくることがとても楽しくなります。ぜひ包丁研ぎにチャレンジして、自分流の包丁の研ぎ方を掴んでください。