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2020.11/26 更新 メディア

2018.1.14_技術と発想で価値創造

「17歳から修行を始めて早54年。技術は進歩したが、職人として常に成長し続けなければならないと思っている。先代からは多くのことを教わった、この強固な土台の上にオリジナルの技を積み上げてきた。」と能登町は宇出津の商店街にある野鍛冶屋「ふくべ鍛冶」の三代目、干場勝治は話す。

 冬場にはイカ割き包丁や能登マキリが飛ぶように売れる。なぜ売れるのか、その理由はいくつかあるが注目すべきは材料のこだわりにある。材料となる金属を厳選し、金属を熱するための火を起こす燃料は繊細な温度管理を可能にする松炭を使用している。包丁の柄には耐久性に優れたカシと軽量で手触りのいいシイを使用している。さらにすべての商品が職人の手作りであり、アフターケアの修理まで請け負う。このように職人のお客様を想う心も、人気の理由の一つである。

 一昨年9月には鮮魚店と共同で新商品である「サザエ開け」を開発した。サザエの独特な貝殻の形状に合わせて、独自の曲がり具合に針を設計した。「生きたサザエを簡単にしっぽの先まで取ることができる!」と全国の漁業関係者や料理店、鮮魚店から注文が殺到、製造が追いつかないほどの大盛況となった。

 また、業務用特注品の売上も順調に伸びてきている。広島県からはカキ養殖の際に使う器具「オイスター・クリッパー」の注文が殺到した。消防署からは消防出初め式のはしごに欠かせない特殊な釘の注文が入ったため、今年の冬は大忙しだ。

 これまで世に存在しなかった新商品の開発によって付加価値を創造した。移動販売車による出張を展開して高齢化が進んだ地域の「買い物弱者対策」にも励んだ。これらの努力が評価されたのか本年度、中小企業庁による「はばたく中小企業・小規模事業者三百社」の一つに選出された。「生産性の向上」「需要の獲得」「担い手の確保」といった点が評価された。「今までの努力と実績の積み重ねが日の出を見たようだ」と三代目の勝治は喜んでいる。

その一方、ふくべ鍛冶を継ぐ四代目の活躍にも目が離せない。干場勝治の長男、健太朗がその人だ。健太朗は今から三年前、長年勤務した町役場を退社してこの世界に飛び込んだ。彼は経営を安定化させるべく、店の法人化に意欲を示している。若さとやる気に満ち溢れる健太朗に対し、「老舗ふくべ鍛冶に新しい風を吹かせてくれるのではないか」と勝治は期待に胸を膨らませている。